根深汁

ptth-garden2005-12-09

今日の夜は、僕の部署を含めて他の部署すべての人があつまる一足早いクリスマスパーティーだった。Vegetarian向きの料理は(珍しく)何もなく、僕はちょっとだけノンベジなものを食べ、あとは酒で空き腹を満たした。今日は豪雪で、寒い中をトボトボ歩いて帰ったら、腹が空いた上に温かいものが欲しくなった。冷蔵庫を開けたら、同じ町に住んでいらっしゃるまじそんさんが先週にニューヨークの日系スーパーで手に入れて、わざわざ僕にもくれた東京ネギが目についた。根深汁を作ってみようと思った。根深とは、日本では普通の太い長ネギのことで、実はここコネチカットでは中国系スーパーにも置かれていない、なかなか貴重な野菜である。

ー手順ー
1)東京ネギ(長ネギ)を輪切りにする。
2)沸騰直前のだし汁にネギを投入。
3)沸騰させない状態で味噌を溶いて出来上がり。

根深汁は池波正太郎の『剣客商売』の中に出てくる食べ物である。池波の食べ物描写の巧さはやはり池波ファンだった僕の父からよく聞いていたし、まじそんさんからは池波の描写を元にした料理本まで出ていると聞いて驚いた。

台所から根深汁(ねぎの味噌汁)のにおいがただよってきている。このところ朝も夕も、根深汁に大根の漬け物だけで食事をしながら、彼は暮らしていた。若者の名を、秋山大治郎という。(「女武芸者」)

飯も汁の実も、噛んで噛んで、強いて言えばほとんど唾液化するまで噛みつぶし、腹へ収める大治郎の食事は、非常に長くかかった。つまらぬように見えても、大治郎にとっては、これが剣士としての心得であり、幼少の頃から父・小兵衛に仕つけられた修行の第一歩だったといってよい(「剣の制約」)

今日の僕は玄米飯と根深汁だけを、やはり噛んで噛んで食べた。旨かった。